マナスルキッチン中山店 (自称)インド料理人がオススメする横浜のネパール・インド料理店

ハイハイ今回で一時帰国のネタは打ち止めです。しばしお付き合いを。
店に行った時、彼は眠い目を擦りながら出てきた。ランチ営業後の休憩時間に店で寝ていたらしい。
怠惰なのではない。睡眠を削って日々身を粉にして働いているのが想像できる。

彼と出逢ったのは約7年前のこと。
歳はずっと下だけど俺の新しい職場の先輩にあたるのがディパック・カナルさんだった。
俺は夜の業界で散々な目にあって二度と戻るまいと決めてカタギな仕事を探してた。
自分でインド料理の店を持つという想いはそのずっと前から持ってはいるが、料理はできても仕事としての実務経験がない。
そこで見つけたのがアジア各国の料理を日替わりで出すお店の厨房だ。
四十を越えた俺には楽な仕事でも実入りの良い仕事でもなかった。でも実務経験と業務的な知識が欲しかった。
昼と夜の二交代制。最初は言葉通り「飯炊き」夜中から明け方まで200kgほどにも及ぶ量の米を炊き続ける。
猛暑の夏。エアコンのない厨房で数時間火を入れっぱなしの揚げ物。
真冬には冷蔵庫の中でサラダの作業。
「大量」の「同じ」野菜を数時間切り続ける作業。
そんな仕事に電車の始発から夕方まで一週間やって、次の一週間は深夜近くから朝まで。
でもいい年こいてね、料理できますっつったって仕事としての経験もなけりゃ和食やフレンチでもないインド料理w
近い分野でも求めていた職場で雇ってくれるところなんてほぼ皆無。
やるしかなかった。
先輩方(ほぼ全員年下w)はいい人達ばかりでしたよ。
でもそんな中でも俺の次に日が浅くて親近感もあり、当時まだまだ下手な日本語でも声をかけてフォローしてくれたのがカナルさん。
ちなみに今回の動画内でも日本式に彼はカナル・ディパックと名乗ってるがホントはディパック・カナル。ディパックがファーストネームだ。
職場でも名字を使っていたから未だに俺もカナル君と呼ぶ。
当時日本に来てまだ1~2年だったかな?つたない日本語ながらいろいろ話をしてくれた。
今自分も海外で生活してみてわかるけど言葉のわからない環境で仕事をしてコミュニケーションをとって、それでも楽しく日々を過ごすってのは簡単じゃない。しかも上記のような労働環境。
彼の苦労やストレスもそういう面ではかなりあったんじゃないかと想像できる。
彼はネパールではシンガーだったらしい。ポップスやロックとかでなく民族音楽的なネパール歌謡なんだと思う。そこそこ売れたらしい。
そんなカナル君が日本へ来たのは奥さんとの出逢いがあったから。
奥さんとはまだお会いしたことがないけど写真で拝見するとかなりの美人w
ちなみに息子さんはハーフのいいとこ取りで奇跡的に可愛い!
俺が一緒に働いていた頃はまだ息子さんもいなくて奥さんも別のところで働いていたけど奥さんは病気がち(実際のところはどの程度かわからないけど)で「身体があまり強くない」とカナル君はいつも心配していた。
そんな奥さんも元気な男の子を出産してお店のあらゆることを精力的にバックアップされているようで本当によかった。
お店の現在に至るまでは相当に大変だったと思う。
カナル君は勉強も兼ねて仕事を掛け持ちしていた。
一緒に働いていた前職、そしてなんと居酒屋で働き、今のお店を始める。
必死でお金を稼いで必死で勉強したんだと思う。
最初は川崎の新作にあるマナスルキッチンの二号店として共同経営でのスタートだったらしい。
それから一年を待たずして今年に入って単独経営で独立店舗となった。
これはスゴイね!
立地的に言うと地域密着型のお店なんだけど地域の人たちに愛されてるね。お店のファンがたくさんいそう。
今回の一時帰国で初めてお店にお邪魔させてもらった。
店のあらゆるディスプレイ、手書きの黒板やポップ、メニューなどのすべてに奥さんの手が入ってるのが見受けられる。
動画でもわかるかな?こんな感じ。↓↓↓↓↓↓↓
動画の通りね、ココにはキッズスペースがあるんですよ。
これ子連れにはホント助かるw
肝心の料理のほうなんだけどこれは文句なし!
イヤ、好みはあるしマニアックにネパール・インド料理にこだわりを持つ人には物足りなさを覚える可能性はある。
でもマズイものは一つもない。基本が百点満点な感じなんですよ!
カレーもナンも完成度が高い。だいたいどこのお店に行ってもカレーはウマいのにナンはアレ?ってのが出てきたり、料理はウマいけどチャイは別に…って感じだったり。そういうことはよくあるんだけどこのお店はその点安定感がある。
手抜きやコストダウンのための料理工程の簡略化やスパイスの省略がない。
そして感心したのがそれを誰でも(子供から病人まで)食べれるように辛さだけを上手くカットしてお客さんの要望で辛さを選べるようにしているところだ。
コレそんなに簡単じゃないんですよ。
俺の場合インド料理だからインド料理基準での判断ですけどね、辛さってのは何もチリペッパーの量だけが影響するわけじゃないんです。
他に入れるスパイスやにんにく・生姜なども辛さに影響する。で、それら全部は辛さと同時に味にも影響してくるから辛さを抑えるために全体に分量を少なくすると味気なくなる。
このバランスは難しくて俺は娘のために娘が食える辛さのないウマいカレーは作れない。今回も子供用のカレーのレトルトパウチを日本から仕入れてきたぐらいだ。
さらに今度は逆を考えても感心できる要素がある。
うまく辛さをカットしたベースができたとしてお客さんの要望で辛くしたときにウマいかどうか。
適当なお店だと辛さだけが浮く。
単純にチリパウダーを加えるだけのお店もあれば手の込んだところでもホールチリをタルカ(油で熱する?)して入れたりするんだけどそれだと辛さだけが独立して際立って料理そのものの味と混ざり合わない。
もう一歩手をかけないと辛くすることもマイナスになる。
マナスルキッチンで一番辛くとリクエストして食ってみたが恐らくそのもう一歩の手間をちゃんとかけてる。
実際に食べてきた料理はこんな感じ。
動画の内容と同じなので詳しくは割愛させてもらう。
付け加えておくとダルバートはコスパがメッチャいいのに贅沢感を満喫できるし、ハニーチーズナンは確実に幸せになれるw
今回はもう入らないってぐらい食べたので食べれなかったけどネパールならではのチョーメン(ネーパールの焼きそば風麺料理)も食べたかった。






独立、理想のお店の実現、さらに子育て。
端から見たらネパール人がやってるってだけの小さな料理屋。そんなお店は今どき沢山あるしだから何?って思うかもしれない。
実際お客さんの立場になったときそんな苦労話など興味はないだろう。ただ美味しいものが食べたいだけなんだから。
ただこのお店は美味しい。そしてその裏付けがそういうところにあるということを知って欲しいなと思った。
ちなみに苦労話や愚痴を本人からは一言も聞いてない。
彼はただ真っ直ぐな笑顔で挑戦を続けている。
昔一緒に働いていた時のほうが愚痴っぽかったかなw?
とにかくそんなカナル君を筆頭に奥さんの最大限のバックアップ、そして一緒に働くシェフの方々。みんないい顔しとります!
妙な精神論と思われるかもしれないが俺は気持ちが最終的な料理の味を決める最も大きな核だと思っている。
だからこの店はウマい。
是非この姿勢のまま頑張って欲しい。さらなる繁栄を願っております。
皆さんもし中山近辺に行かれる際は足を運んでみてください。損はしませんよ!
横浜線中山駅南口から徒歩7分、宮の下交差点
〒226-0011 神奈川県横浜市緑区中山町745-7 シャルムGOTOH101
Tel:045-935-7939
無休
ランチ 11:00~15:00
ディナー 17:00~22:00
マナスルキッチンのFacebook⇛ https://www.facebook.com/manaslunakayama/
マナスルキッチンのInstagram⇛ https://www.instagram.com/manaslu_kitchen_nakayama/?hl=ja
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