ジョン・カサヴェテスについて好きなことだけ書く

ジョン・カサヴェテスについて好きなことだけ書く

記事が出る頃には夢のゴールデンウィークは終わってるだろうが自粛期間ということもあるので映画の話でも好きに書いてみたいと思う。

 

特に詳しく知っていることはない。

 

ジョン・カサヴェテスについてだ。

 

詳しい逸話や評論を読みたい人がいるなら少々高価ではあるが、先ずフィルムアート社から出版されている「カサヴェテスストリームス」を一読されることをおすすめする。

 

カサヴェテス没後数年のうちに出された古いものなので中古しか無いようだけど、カサヴェテスについて写真とともに評論などが掲載されているもので、俺のかつての友人も記事を書いていてカサヴェテス愛が詰まっている本だ。

 

一応リンクも貼っておく。

 

さて当の俺は評論なんてどうでもいい。ごたくは要らない。

カサヴェテスは観て感じてナンボだ。

 

カサヴェテスを知らない人がこの記事を読むかは疑わしいが、そういう人のために少し。。。

 

ジョン・カサヴェテスという人はアメリカはニューヨークの映画監督であり役者でもあった人。

確か80年代の終りにこの世を去った。

 

今や若い世代の人たちに彼の名を言っても「誰ソレ?」って感じである。

いや、若くなくても大体同じ答え。

 

ところが劇映画に関係する人や映画好きの人なら全員がその名前ぐらいは知ってるというぐらいの人だ。

 

インディーズ映画の巨匠なんて言われてる。

 

注目すべき「映画監督」であってインディーズ映画なんて前置きはいらない。ただハリウッド映画を嫌っていたにすぎない。

 

ハリウッドのいわゆる巨匠たちがこぞってリスペクトしてる。そういう人だ。

 

 

若い頃彼は演劇を学んで即興劇に打ち込み、台本のない即興演技を取り入れた実験映画(?)なんかを撮り始める。

その頃の作品で知られているのが

「アメリカの影」

 

まあ自主制作で役者としてハリウッドでギャラを稼いでは自宅を抵当に入れて借金しながら映画を撮っていたぐらいだから寡作ではあるんだけどもそんな風に死ぬまで映画を撮り続けた人。

 

ここまで言うとアンチ商業映画の芸術作品を作り続けた天才のように思うかもしれないが、俺には芸術作品とかって風には思えない。

 

そんな難解さもお高く留まった高尚さも無い。

 

もっと生々しい何かで、静かだがマグマのような熱量を持った何かで、あまりにも人間臭いものだ。

映像の完成度など無視してその瞬間の息づかいや怒りや苛立ちやもどかしくうまく伝わらない愛情などをその「視線」や「視点」から切り取ってただ見せるような映画。

 

扱う題材は本当に等身大のアメリカ。マフィアを描く事もあれば工事現場の監督だったり舞台役者の話だったり。

 

アクションシーンがないわけでもないが、ド派手でスマートでハリウッド的で刹那的な興奮を煽るようなソレとは違う。

不器用に、無造作に残酷にちゃっちい「パンパン、」という乾いた銃声で人が死んでいったりする。

 

撃たれた瞬間や血の飛び散るさまなんかをわざわざ演出して見せたりしない。その代わりその場にいる人間の表情や行動、その様子を捉える。

 

彼が「瞳」に映したいのは人間。

 

彼の映画はどれも素晴らしいが、俺が好きなものを4+1作品挙げる。

「オープニング・ナイト」

 

舞台女優が老いをテーマにした大舞台を控えた前日、熱狂的なファンの少女が目の前で事故死してから翌日喝采を浴びて初日を終えるまでの話なんだが、これは老いと葛藤する中年大女優を描いているとのことでジョン・カサヴェテスの妻でもある俺の大好きなジーナ・ローランズの好演が評価の高い作品なわけだが、それはもちろん素晴らしいとしても俺にはそこはどうでも良かったりする。

 

この中に出てくる劇中劇の中でジョン・カサヴェテス自身が演じる姿がヒステリックで狂気じみてて喧嘩腰で焦っていてとにかく大好きな場面だ。

ジーナ・ローランズの演じる女優の主観的世界観でその夜が描かれ展開していく。そのように「女性」を男性のカサヴェテスが描けることにも関心するが、それが主観的なようで客観的にずーっとその夜を見つめている視線が同時に存在することに胸を打たれる。

 

そこには「女性」としての若さや老いへの葛藤にとどまらずもっと混沌と多数の愛や緊張が「整理せず」にそのまま描かれていたり、若さと老いが生と死に重なったり、そしてそれがタバコや震えや汗や髪の乱れで表現されていたりするもので埋め尽くされていて、だからなんだというものはなく、「そうして人は生きている」というものだけがまざまざと存在する。

 

ジョン・カサヴェテスの作品すべてに通じるものだ。

 

それから

「グロリア」

これはもう誰もがジーナ・ローランズに「惚れてまうやろー」と言いたくなる映画。

珍しくこれは商業作品として世に出た映画。

リメイク版ではシャロン・ストーンが好演してたけどこのジーナ・ローランズに挑んだのは大したもんだよね。

誰もかなわないと思う。

 

一応ハリウッド映画なのでアクションシーンは一番派手かもしれない。

ギャング映画のようでもあるが、これも「女性」の物語。愛と罪と母性と自分の人間性を信じたい「人」を描いた映画。

ずっと古い作品の中に出てくるジーナ・ローランズはそりゃあ可愛いんだが、完全にやられたのはこの「グロリア」だ。

これを観て以来女優の最高峰はジーナ・ローランズである。

 

そしてどうしようもなく好きなカサヴェテス作品といえば

「ラブストリームス」

一番好きだ。

うまく説明はできない。

ストーリーを覚えてすらいない。

そもそもストーリーなんて無いに等しい映画。

彼はこの映画にもなけなしの金と時間と命をつぎ込んでいたんだろう。

お馴染みの彼の抵当に入れてた自宅のシーンも好きだ。

そして撮れるものから撮っていたようで、後のシーンで鼻っ柱に(実際に)怪我をするシーンがあるのだが、その前のシーンですでにその怪我があったりする。要するに順撮りはしていないし予算もスケジュールもないし、顔に負った怪我の様子が前後したりしたわけだが、彼にとってはそんなことどうでもいいのである。今と言ったら今だし、その熱を持ってして捉えるべき愛がそこにあればそれがすべてって感じなんだと思う。ちなみにビッグ・トラブルは完成していないといえるのでラブストリームスが実質的な遺作かな?

 

もう一つ一番というか、もうどれが一番とか言えない感じなんだが

「こわれゆく女」

カサヴェテスの盟友ピーター・フォーク主演。子供の頃からコロンボが好きじゃなかったんだけどこの映画でピーター・フォークが理解できた気がする。

ジーナ・ローランズの演技はもはや演技を超えてる感じ。

ラストのビンタがとても好き。

単純でもない。正解でもない。でもビンタ。

これには泣いた。

 

最後は+1。

「シーズ・ソー・ラヴリー」

これはジョン・カサヴェテス監督作品ではない。息子のニック・カサヴェテス監督作品だ。

ジョン・カサヴェテスは脚本。死後に撮られたものだからね。

でもこれはある意味ジョン・カサヴェテス作品と呼んでいいものだと思う。

ジーナ・ローランズこそ出てはいるがおなじみのキャストもいない。

そのかわりカサヴェテスを愛する名優が揃っている。

ショーン・ペン、ジョン・トラボルタ、ショーン・ペンの妻でもあったロビン・ライト。

カサヴェテス作品には珍しくちゃんとストーリーがあるほうなんだが、その熱量がすごい。

当時一緒に劇場に見に行った女友達は観終わったあと「なんか青臭い」と評したw

 

その青臭さとかはこの作品においてどうでもいいことなんだよw!

夢なんだから。

カサヴェテス作品の中で一番ストーリー性があって一番ストーリーのない映画なんだよ。

 

そして一番直接的に愛を描いた作品でもある。

 

 

今回挙げた内の何作かはたしか今どこかでネット配信されてたような。。。

定かではないが、興味を持たれた人がいたら探して観てみることをおすすめする。

 

俺が最も影響を受けた映画監督の一人。

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